退職したのでこれまでやってきたことをまとめたら書いてて自分で謎だとおもった

ながく勤務していたバウ広告事務所を、2019年8月ではなれることにした。どんな仕事をしていたのか、以前から説明に困ることもおおかったけど、職をはなれたらますます説明しづらいことがわかった。年末でもあるし(?)、この機会にここに書いておきたい。

ざっくりしたこと

同社は広告制作会社だけど、グラフィックデザインスタジオといった方がたぶん実態にちかい。50人くらいで2/3がデザイナー。契約社員〜正社員〜取締役として、11年3ヶ月在籍した。情シス〜ヘルプデスク的な業務がメインだったが、ほんとになんでもやっていた。最後の2年間は取締役として、採用・人事制度・契約・法務などなどのバックオフィス業務全般にたずさわった。並行してタイポグラフィの知見をいかしたアドバイザリーぽいこともしていた。

情シス不在から、現代的な環境を整備するまで

そもそも同社には情シス的ポジションがなく、兼任スタッフが整備をおこなっていた。このため業務環境、とくに「制作」とよばれるデザイン系の作業環境の更新がとどこおってしまい、身動きがとれない状態となっていた。(もちろん兼任の方のせいではない。おもいかえせば結構古くなってしまっていたけど、当時はそういう会社がおおかった)。 そこで、デザイナーとして勤務経験があったぼくに、半年間の契約でこの環境を改善するよう依頼があった。結果、そこからそのまま11年、ひとり情シスとして勤務することになった。

Mac主力の小規模オフィス(=ADがない)としては、最終的にそこそこ悪くない感じになったかな…とおもっている。 時にはケーブルの床下配線もしつつ、ユーザ業務への負担をおさえながら、将来を見据えた環境づくりを心がけた。 よくいわれることだけど、定着こそがだいじだ。私見だけど、グラフィックデザイナーやグラフィックアーティストはツールの変更を好まない。カジュアルなデモや講習で有用性を体感してもらったり、ヘルプデスク的にすばやくユーザの疑問を解消することに注力した。もともとデザイナーなので近い目線で話せたのではないかとおもうし、Adobe製品を含め印刷〜DTPに知見があったので、デザイン作業だけでなく外注をふくめたプロセス全体についてアドバイスできたかなとおもう。カラーマネジメント講習をやったりとかもした。

以下は、社内でつかっていた製品群。これをみればおおよその雰囲気がわかる……かな。 ちょっとそれっぽいことを書くと、ADがないのでOneLoginでID管理。スマホはG suiteで制御。ノートPCはMDMで制御。デスクトップ型のMacは構成プロファイルをMunkiで投入して制御した。OneLoginでRadiusしてMeraki…というのがやりたかった…。あとVoIPにはほんとーに苦労した。Merakiの前はYamahaつかってた。

  • デザイン系職のMaciMac 27" + SSD + メモリ16GB
  • 営業系職のPC:Dell XPS 13
  • OneLogin(IdP・SSO)
  • G suite(Gmail、社内ポータル、GDFS、Chrome管理、Android MDM
  • TeamSpirit + Leaders(勤怠管理・経費精算・プロジェクト工数管理)
  • MS O365(Word, Excel等)
  • Phone Appli(名刺管理)
  • VMware AirWatch(MacBook+Win10機のMDM
  • Munki(Macのアップデート管理と、プロフィール制御)
  • Androidスマホ貸与(PBX子機として使用)
  • Cisco Meraki

その他グラフィック用途で特殊なもの

バックオフィス方面でやったこと

法務

この10 年で直説取引メインの業態に変化したため、NDA周りを中心に法務能力の強化が必要になってきた。顧問弁護士とともにここ数年はこの強化に取り組んだ。 知財関連の強化も必要になったので、制作業務プロセスの見直しをした。ライセンスチェックを業務プロセスの中に位置づけて、具体的にはぼくがライセンスを読んだ。ストックフォトやフォントなどは海外の個人作家の著作物がおおく、ライセンスがかなりラフな英語だったりもするので、著作者に直接問い合わせるケースも多々あったりした。セキュリティや著作権の講習なんかもやったりした。

直近では労働法の変化等にあわせ、就業規則の大幅な改訂をめざしてこちらは社労士さんと作業中だった。

労務

いわゆる働き方改革対応もあり、就労時間管理をあれこれ強化していた。経営層が課題把握をしやすくするだけでなく、スタッフに納得感のある軌道修正をめざした。

人事制度

ほとんどの社員が直接部門で売上をもっているので人事評価制度はシンプルだったけど、調査したら満足度が低いことがわかった。誤解や理解不足による不満もおおかったため、現制度の広報をしっかりおこないつつ、改善のための人事評価制度の策定をおこなっていた。スキルマップをつくったり、フィードバック制度の改善を提案したり、スキル特化ポジションをかんがえたりなどなど。

Webチームの立ち上げ

同社は現在もグラフィックメインの会社で、Webに強いとはいえない。でもWeb対応はもちろん必要になったため、初期にはぼくが「ひとりWebチーム」として稼働した。具体的にはデザイン、コーディング、提案、クライアント対応や外注先の管理などなど、要するになんでもやっていた。そうこうしているうちに、ありがたいことに優秀なメンバーが入社してくれてチームが拡大した。おかげでぼく自身は業務をおこなう必要がなくなったが、その後もグラフィック部門との間での齟齬があると、文化的通訳のような作業をしたり、全体の底上げをめざしたりした。

タイポグラフィスペシャリスト

同社は近年、ブランディングをひとつの柱としていて、書体についても「なんとなく」ではない提案が必要になっていた。ぼくはロンドン芸術大学タイポグラフィ修士で、国際タイポグラフィ協会の会員ということもあったりして、この分野の知見があった。このためブランディング案件での書体の選定や、その背景の言語化をお手伝いすることがふえていった。さらに、ロゴ作成プロセスや書体探しなどのこまかな作業にもアドバイスベースで関与した。当初これは非公式な業務だったが、のちに「タイポグラフィスペシャリスト」として公式な肩書きになった。かんがえてみれば「勝手になりゆきでやってるうちに公式な仕事になる」ということがおおかったな…。

退職の理由

直近、年配の創業オーナーが代表に復帰されて、あたらしい方針が示されつつあった。経営方針が変化するのであれば、役員もすこしはいれかわった方がいいだろうし、ここが変化の時かなとかんがえたことが理由。ほかにもなくはないけどそこは割愛。この11年間、ほんとうにいろんな業務にたずさわった。それらに興味を持ってとりくむことができたのは、同社のスタッフが仕えるに値すると感じられるすばらしい仕事をしてくれていたからだ。道半ばの作業もあったりして心残りがないわけでもないけど、おそらくそれはどのタイミングでもそうだろう。11年、そこそこよい仕事ができたかなとおもっている。そうそう、ここまでの話と並行してデザインしてた時期もあったりしたな…。

これからはフリーランスでがんばりまっす

よくきかれるけど、農家になるのではないです。個人事業主としてはたらこうとおもう。かつて同僚に「謎のスキルセット」と評されたこともあったし、奥さんからは「そのスキルセットは会社員向きじゃない?」ともいわれているけど、年齢的にも「次のこと」を取り組むには今が最後かもとも感じており、この機会にもうすこしちがうことをしてみたいなーとかゆるふわなことを言っている。すでにグラフィックのお仕事をほんのすこし、かわったところではプロジェクトの記録を作成するといったお仕事(?)もいただいている。このへんくわしくはまた。仕事ではないけど、相馬田んぼアートにくわえて、国分寺のちょっとした有志プロジェクトに参加したりもしてるよー。